
世界最速で4階級制覇を成し遂げたプロボクサー田中恒成選手(29)が、2025年6月4日、名古屋市内で現役引退を表明しました。華々しいキャリアの幕引き、その背景には「目が見えなくなった」という深刻な事情がありました。
引退会見で
田中恒成さんは記者会見を開きこう語りました。
「プロボクサー田中恒成は引退することをご報告させていただきます。長い間、たくさんの応援本当にありがとうございました」と報告。理由は「けがが全ての原因」と語り、「10月14日の試合前から両目の状態が悪く、試合直後に両目とも手術をすることを決めて試合に臨んだ。試合が始まってすぐ右目が見えなくなってしまい、3ラウンド目には光も全て消えてしまった。左目の状態も悪い中で試合は終了した」
引用元:中日スポーツ
現れた目の異変
田中選手の現役最後の試合は、2024年10月のWBOスーパーフライ級王座防衛戦でした。実はこの試合前から、両目の状態が悪化しており、本人は「試合直後に両目とも手術をすることを決めていた」と語っています。
試合が始まるとすぐに右目の視界が失われ、3ラウンド目には光さえも感じなくなったといいます。左目も万全ではない中、最後まで戦い抜きましたが、結果は判定負け。試合後には両目の手術を受け、視力は一時的に回復したものの、今も右目の視界はゆがみ、両目で焦点を合わせることができない状態が続いているようです。
試合の途中、目をパチパチとしていたのが気になりました。やはり目に異常を感じていたんですね。
失明の可能性
田中選手は「けがが全ての原因」と断言し、「現役を続ければ失明の可能性が極めて高い」と医師からも告げられたことを明かしました。「現実的に続けることができるのかという視点で判断し、不可能ということになった」と、4月ごろに引退を決意したといいます。
「次に試合すれば目を失明してしまうという状況になり、リングに上がる道がなくなってしまった」
戦績やキャリア
田中恒成選手は、2013年のプロデビューからわずか12戦で3階級制覇を達成し、2023年2月には世界最速で4階級制覇という偉業を成し遂げました。日本人男子としては井上尚弥、井岡一翔に次ぐ3人目で、最年少での快挙でした。
田中恒成のプロフィール
- 本名:田中 恒成(たなか こうせい)
- 生年月日:1995年6月15日
- 出身地:岐阜県多治見市
- スタイル:右ボクサーファイター
- 主な所属:畑中ボクシングジム
- プロ通算戦績:22戦20勝(11KO)2敗
- アマチュア戦績:51戦46勝(13KO・RSC)5敗
主な獲得タイトル
- WBO世界ミニマム級王座
- WBO世界ライトフライ級王座
- WBO世界フライ級王座(スーパー王座認定)
- WBO世界スーパーフライ級王座
- 世界4階級制覇(日本人男子3人目、世界最速達成
戦 | 日付 | 勝敗 | ラウンド | 結果 | 対戦相手 | 国籍 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2013年11月10日 | ☆ | 6R | 判定3-0 | オスカー・レクナファ | インドネシア | プロデビュー戦 |
2 | 2014年3月16日 | ☆ | 8R | 判定3-0 | ロネル・フェレーラス | フィリピン | |
3 | 2014年7月20日 | ☆ | 1R 1:55 | KO | クリソン・オマヤオ | フィリピン | |
4 | 2014年10月30日 | ☆ | 10R 0:50 | TKO | 原隆二(大橋) | 日本 | OPBF東洋太平洋ミニマム級タイトルマッチ |
5 | 2015年5月30日 | ☆ | 12R | 判定3-0 | フリアン・イェドラス | メキシコ | WBO世界ミニマム級王座決定戦 |
6 | 2015年12月31日 | ☆ | 6R 2:15 | KO | ビック・サルダール | フィリピン | WBO防衛1 |
7 | 2016年5月28日 | ☆ | 6R 2:23 | KO | レネ・パティラノ | フィリピン | |
8 | 2016年12月31日 | ☆ | 5R 1:52 | TKO | モイセス・フェンテス | メキシコ | WBO世界ライトフライ級王座決定戦 |
9 | 2017年5月20日 | ☆ | 12R | 判定3-0 | アンヘル・アコスタ | プエルトリコ | WBO防衛1 |
10 | 2017年9月13日 | ☆ | 9R 1:27 | TKO | パランポン・CPフレッシュマート | タイ | WBO防衛2 |
11 | 2018年3月31日 | ☆ | 9R 2:26 | TKO | ロニー・バルドナド | フィリピン | |
12 | 2018年9月24日 | ☆ | 12R | 判定2-0 | 木村翔(青木) | 日本 | WBO世界フライ級タイトルマッチ |
13 | 2019年3月16日 | ☆ | 12R | 判定3-0 | 田口良一(ワタナベ) | 日本 | WBO防衛1 |
14 | 2019年8月24日 | ☆ | 7R 2:49 | TKO | ジョナサン・ゴンサレス | プエルトリコ | WBO防衛2 |
15 | 2019年12月31日 | ☆ | 3R 2:29 | KO | 烏蘭託了哈孜 | 中国 | WBO防衛3 |
16 | 2020年12月31日 | ★ | 8R 1:35 | TKO | 井岡一翔(Ambition) | 日本 | WBO世界スーパーフライ級タイトルマッチ |
17 | 2021年12月11日 | ☆ | 10R | 判定2-1 | 石田匠(井岡) | 日本 | |
18 | 2022年6月29日 | ☆ | 5R 2:52 | TKO | 橋詰将義(角海老宝石) | 日本 | WBOアジア太平洋スーパーフライ級タイトルマッチ |
19 | 2022年12月11日 | ☆ | 10R | 判定3-0 | ヤンガ・シッキボ | 南アフリカ共和国 | |
20 | 2023年5月21日 | ☆ | 10R 2:43 | TKO | パブロ・カリージョ | コロンビア | |
21 | 2024年2月24日 | ☆ | 12R | 判定3-0 | クリスチャン・バカセグア | メキシコ | WBO世界スーパーフライ級王座決定戦 |
22 | 2024年10月14日 | ★ | 12R | 判定1-2 | プメレレ・カフ | 南アフリカ共和国 | WBO陥落 |

まとめ
田中選手は「強い人間でありたい」という信念を胸に、今後もボクシング界に何らかの形で関わりたい意向を示しています。失明のリスクと隣り合わせだった壮絶な闘い、そして「見えない」恐怖と向き合いながら下した決断は、ボクサーとしてだけでなく、一人の人間としての強さを物語っています。
目標としていた5階級制覇を達成できなかったことについて「やっぱり悔しい思いしかない。ただ、引退する中でいちばんにあるのは、ありがとうという思いだ。ボクサーとしての人生は終わりになるが、スポーツはすべて人生の過程だと思ってるので、引退しても頑張っていきたい」
引用元:NHK news
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そんな田中選手が、最後の試合では階級の壁なのかと思っていたのですが、目が見えないので接近戦をせざる負えなかったのですね。