ガソリン税の暫定税率廃止は実現するのか? メリットと課題、今後の展望を徹底解説

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ガソリン価格の高騰が家計を直撃する中、にわかに注目を集めているのが「ガソリン税の暫定税率」の廃止をめぐる議論です。これは単なる値下げ話にとどまらず、国の財政、環境政策、さらには私たちの生活全体に大きな影響を及ぼす可能性があります。この記事では、暫定税率の廃止によって何が変わるのか、そのメリットと、見過ごせない問題点について、最新の動向を交えて詳しく解説します。

目次

暫定税率廃止によるガソリン価格の変化と私たちの生活への影響

現在、ガソリン価格には「暫定税率(旧特例税率)」として、1リットルあたり25.1円の上乗せ課税がされています。この税率が廃止された場合、単純計算でガソリン価格は約25円下がることになります。

たとえば、現在レギュラーガソリンが全国平均で約174円/L(補助金を除く)だとすれば、廃止後は159.1円/Lまで価格が下がるという試算もあります。

ガソリン価格下落のメリットは?

  • 家計負担の大幅軽減: 日々の自動車通勤や買い物、週末のドライブなどにかかるガソリン代が減り、家計の負担が大きく軽減されます。特に公共交通機関が少ない地方では、年間数万円規模の節約効果も期待できます。
  • 物価高騰の抑制効果: 運送・物流業者の燃料コストが下がるため、生鮮品や日用品、通販の送料など、生活関連商品の販売価格の安定に寄与すると考えられます。
  • 地方経済の活性化: 自動車への依存度が高い地域では、ガソリン代の節約分が他の消費に回りやすくなり、地域経済の活性化につながる可能性があります。

廃止に伴う多岐にわたる課題とリスク

一見、良いことばかりのように思える暫定税率の廃止ですが、その裏には看過できない複数の問題点が潜んでいます。

  • 1. 国・地方財政の大幅な税収減: 暫定税率廃止による最大の懸念は、年1兆円から1.5兆円規模の税収が失われることです。この税収はこれまで、道路や橋、トンネルといったインフラ整備、公共交通への補助、そして国の財政赤字の穴埋めに充てられてきました。この財源を失うことで、将来のインフラ維持が困難になるほか、消費税増税や新たな税金の導入といった代替財源の確保策が不可避となります。
  • 2. 環境政策との矛盾: ガソリン価格が下がると、消費者がガソリン車をより多く利用するようになり、結果としてCO₂排出量が増加します。これは、日本が掲げる脱炭素社会の実現やグリーントランスフォーメーション(GX)戦略に逆行するものです。ある研究では、2030年の運輸部門のCO₂排出量が最大で7.3%増加するとの試算も出ており、環境面での深刻な影響が懸念されます。
  • 3. エネルギー安全保障のリスク増大: ガソリン消費量が増えれば、当然、原油の輸入量も増加します。日本のエネルギーは中東への依存度が高く、輸入量の増加はエネルギー安全保障上のリスクを高めることにつながります。
  • 4. 流通現場の混乱: 廃止による急激な価格変動は、ガソリンスタンドなど流通現場に大きな混乱をもたらす可能性があります。たとえば、廃止決定前に仕入れた高価格のガソリンを、廃止後に安価で売らざるを得ない場合、事業者が大きな損失を被るリスクが指摘されています。
  • 5. 制度的な公平性議論の遅れ: 暫定税率廃止だけが先行すると、燃料課税の公平性やガソリン車以外(電気自動車など)との税負担のバランスといった、税制全体の抜本的な改革議論が遅れてしまう懸念があります。

廃止は本当に実現するのか? 最新の動向と展望

「本当に廃止できるのか」という点については、2025年8月時点で大きな進展が見られます。与党と主要野党が「年内に暫定税率の廃止を目指す」ことで合意し、法案の検討と実務協議が開始されました。特に野党は「2025年11月1日施行」を目標に法案を共同提出しており、廃止に向けた動きは加速しています。

しかし、「廃止が確定」したわけではありません。最大の障壁は、やはり年間1兆円を超える税収減をどう補うかという「代替財源の確保」です。政府・与党内からは、「財源問題などを整理した上で早期に」という慎重な声も出ています。

また、廃止と同時に現在支給されているガソリン補助金も終了する可能性が高く、その場合の価格変動や現場の混乱をどう回避するかも重要な課題となっています。廃止実現の可否は、今後数カ月の国会審議や財政論議、現場との調整の進捗に左右されることになります。

まとめ

ガソリン税の暫定税率廃止は、私たちの家計を助ける大きなメリットを持つ一方で、国の財政や環境、エネルギー安全保障といった多方面にわたる深刻な課題も内包しています。単なる価格問題としてではなく、これらのメリットとリスクを総合的に考慮した議論が求められます。今後の政治的な協議や国会審議の行方から、目が離せません。

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