2025年夏に開業予定だった沖縄県北部の大型テーマパーク「JUNGLIA（ジャングリア）」。
ユニバーサル・スタジオ・ジャパン（USJ）再建で名を馳せた森岡毅氏率いる株式会社刀が主導し、地元企業も参画する大型プロジェクトとして注目を集めていました。
しかし、開業を前にしてネット上では“炎上”が続出。
その理由は、単なる運営ミスや価格設定ではありません。
この記事では、環境破壊の懸念から企業姿勢への不信感、地域社会の分断に至るまで、多層的な背景を掘り下げて解説します。
なぜ炎上？ 5つの主な理由
1. 世界自然遺産・やんばるを脅かす「環境破壊」
最も深刻かつ継続的な批判は自然環境への影響です。
ジャングリアの建設予定地は、2021年に世界自然遺産に登録された「やんばる地域」に隣接し、一部がその保全区域に近接しています。
- 広範囲の森林伐採が動植物の生息地を破壊
- 雨水の流出による赤土の海洋汚染がサンゴ礁にダメージ
- 夜間照明や騒音が夜行性動物の生態リズムを乱す恐れ
この地域には、絶滅危惧種であるヤンバルクイナが生息しており、車の往来が増えればロードキルのリスクが一気に高まると懸念されています。
2. 「刀」の開発手法は沖縄と合わない？
プロジェクトの中心人物である森岡毅氏と株式会社刀は、マーケティング戦略に定評があり、USJや西武園ゆうえんちの再生で実績を持ちます。
しかし、今回は「都市型再生」ではなく、未開発の自然エリアへの新規建設。その手法に疑問の声が多く上がっています。
- 地元文化や自然へのリスペクトが不十分
- 地元住民との対話不足が指摘されている
- 「商業主義が自然を飲み込む」という不安
実際に「地元の声が計画に反映されていない」と感じる住民も多く、刀社の進め方に対する反感が、計画全体への不信感へとつながっています。
3. 名護市の水源地を脅かすリスク
名護市民の水道水を支える複数の水源地（ダムや河川）が、開発地周辺に存在しています。
- 濁水や排水処理の不備による水質汚染の懸念
- 森林伐採による水源涵養機能の低下
- 地域住民の「安全な水」への不安が顕著
テーマパーク開発が「ライフラインを脅かすのではないか」という危機感が強く、多くの反対意見の根幹となっています。
4. 開業前後の運営不備とトラブル
2025年春にプレオープン的に一部運営が開始されると、次々に問題が表面化。
- 入場料が高額、アトラクションはほぼ別料金
- 一部施設は未完成のまま開業
- ロッカーでの現金盗難事件など不祥事も発生
- スタッフの数や教育が不十分で、接客対応に差
SNSには「期待外れ」「二度と行かない」といった声があふれ、失望が拡散されました。
5. アクセスの悪さと競争力の欠如
沖縄北部に位置するジャングリアは、那覇空港から車で2時間以上。しかも慢性的な渋滞エリアです。
- アクセスの不便さがリピーター獲得の妨げに
- USJやディズニーと比べて差別化が不明確
- 施設の魅力が「沖縄に行ってまで体験すべきか」に届いていない
立地・価格・体験価値のバランスが取れていないという指摘も、炎上の背景にあります。
地元の声は真っ二つ：期待 vs. 不安
| 立場 | 主な意見 |
|---|---|
| 賛成派 | ・観光客の増加による経済活性化 ・新たな雇用で若者の地元定着を促進 ・インフラ整備が進み生活向上も期待 |
| 反対派 | ・自然環境の破壊が深刻 ・水源や騒音、渋滞など生活に直結した懸念 ・地域の伝統や文化の軽視 |
「自然を守りたい」「でも地元も元気になってほしい」このジレンマが地域を分断し、対話の困難さにつながっています。
計画の進行状況と今後の見通し
- 計画地はオリオンビール工場跡地とその周辺
- 環境影響評価（アセスメント）手続きが大幅に遅延
- 2025年夏開業予定だったが、実現は「困難」との見方が多数
- 事業者は推進の姿勢を継続中だが、反対意見との溝は深い
国際的にも注目されており、ユネスコ世界遺産委員会も影響を注視しています。
専門家の見解と「失敗リスク」
テーマパークの専門家や観光アナリストの多くは、以下のような分析を行っています。
- 差別化が困難で、強いコンテンツが見えない
- アクセスの悪さが致命的
- 森岡氏でも「成功が難しい」ならば他の再建案も難航する
- 環境・交通・コスト・文化的配慮といった複合課題が重なり、「総合的に見てリスクが高い」
今後どうなる？ 見直し・中止・実行の可能性
現状、以下の3つのシナリオが想定されます。
- 計画の一部見直し・規模縮小
- 計画白紙撤回（住民訴訟・政治的圧力含む）
- 批判を押し切って開業強行（対話継続含む）
いずれにせよ、住民・行政・事業者の信頼関係の再構築がなければ、計画の持続可能性は疑問視され続けるでしょう。
まとめ：自然か経済か、問われる沖縄の未来
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 環境破壊 | 世界自然遺産・やんばるへの影響、ヤンバルクイナ絶滅リスク、水源問題 |
| 企業批判 | 刀社の商業的手法と地元文化とのギャップ、対話不足 |
| 運営トラブル | 価格設定、未完成施設、トラブル多発 |
| 地域分断 | 賛否両論が交錯し、住民間でも意見が割れている |
| 今後の焦点 | 計画の見直し、住民合意の有無、国際的評価への影響 |
最後に：私たちができることは？
「自然を壊してまで作る価値はあるのか」
「沖縄が本当に望む観光のあり方とは？」
この問題は、開発か保護かという単純な二元論では語れません。
だからこそ、透明性ある情報開示と、丁寧な対話の積み重ねが必要です。
※次回の記事では「ジャングリア沖縄の宿泊エリアおすすめホテル7選」を紹介予定です。気になる方はブックマークをお忘れなく！